自己嫌悪


某駅をスタスタと歩いていたら、見覚えのあるマフラーをつけている人が目に入った。
「あれ?友達?」と思ったけど、ちょっと体型が違うように見えたので、そのまま歩き続けた。
するとその彼は急に方向転換し、俺の後をつけてくる。


よーし。
俺を試してるんだな。


俺は急いでヘッドホンの音量を下げ、いつ呼び止められてもいい環境を作る。
そして、自動販売機の前で立ち止まり、売られている缶ジュースを近距離で眺める。
それを自動販売機ごとに3回やった。


まだ声をかけてこないか。
なかなかやるな。


しょうがないから、歩きながらヘッドホンをつけたりはずしたりを繰り返した。
1秒おきに着脱を繰り返す俺。
まるでそういうマシーンかのような無駄のない動き。


うん、誰がどう見てもつっこむだろうと思ったんだけど、背後からは何も来ない。
しびれを切らしてすごい勢いで振り向くと、誰もいなかった。
そもそも体型が違うんだもんなぁと納得しつつ、すごい後悔している俺がいた。動き損!